長期優良木造3階建てが「想定通り」倒壊
大型
の設計物件の取りまとめに追われてしまったが久々の書き込み。
最近タイトルのようにちょっとショッキングな実験結果が公表された。E-ディフェンスにおける10月27日、木造3階建て住宅を試験体とした実大振動実験の結果である。加振の結果、性能表示制度における「耐震等級2」相当とした試験体が倒壊したものである。
(加振に使った地震波は、建基法が想定する人工地震波を1.8倍した波形で、法が想定する入力加速度400galに対して、720galにも達する巨大地震とのこと)試験体は2体あり「試験体1」が「耐震等級2」、「試験体2」が「耐震等級1」のランクとなっている。「耐震等級1」は現行の建築基準法の基準を満たしたものであり「耐震等級2」はそれよりも1.25倍の強度を満たしたものとなっている。当然「耐震等級2」の方が強いはずなのだが今回の実験結果では強いはずの「耐震等級2」の方が完全に倒壊しておりそれよりも弱いはずの「耐震等級1」の方は損壊はしているが倒壊はしていない。
なぜこのような結果となったのだろうか?
「試験体1」では許容応力度計算により、建築基準法が求める耐震性能の1.44倍を確保していたそうで「試験体2」は、耐力壁の仕様は試験体1と同じだが、柱頭柱脚の接合部を試験体1より劣ったものとしていたとのことである。
ケンプラッツの記事によると<開始10秒後の大入力で試験体2の柱脚が引き抜け、試験体全体が大きく傾いたことが確認できる。実験後の研究者グループの発表によると、このときの層間変形角は7分の1にも達していた。試験体2は、この時点で構造が破たんしたためにその後の応答が鈍くなり、結果として倒壊を免れた。大橋教授は、「柱脚が外れたために、いわゆる『タッピング現象』を起こした」と解説する。なお構造解析の上では、構造が破たんした段階で「倒壊」と見なしている。つまり、「開始10秒で試験体2は倒壊した」というのが研究者グループの判断だ。 一方、試験体1の柱頭柱脚は最後まで外れなかった。だが大変形で、これ以上傾くと崩壊するという限界を超え、変形が進むほど重力加速度の影響が強まる「P-δ効果」によってゆっくりと変形が進み、倒壊に至った。>とある。
構造解析上では両方とも倒壊と判断しているそうだが現実の状況は大きく違う。弱いはずの「耐震等級1」の試験体の方は損壊したとはいえその形を維持している。中に人がいたとしても倒壊による被害は免れたはずだ。
現行の建築基準法の仕様規定では従前にも増して建物は金物でがんじがらめ、固い建物にせざるを得ない状況だ。固い(過ぎる)建物が必ずしも強い(倒壊し難い)とは言い切れない実験結果となった。現行法の仕様規定に疑問を持ちながらも建築確認を受けるためにこのような建物にせざるを得ない状況には実務者としては常々疑問を感じていたところであるが今回、正に現実の実験結果として見せられる事となった。
木造には剛構造のRC(鉄筋コンクリート)造とは違う柔らかさ、しなやかさを生かした造り方があるのではないかと思っているが現行法の仕様規定はそれを評価していないし仕様を外した設計では適合性判定の高いハードルがあり費用や時間を考えれば個人住宅レベルでは事実上実現不可能な状況である。
私もメンバーとなっている「真壁ネット」では固さ一辺倒の現行仕様に拘束されない新しい仕様を検討している。手を付け始めたばかりで越えなければならないハードルも多くあるが実務で使える所まで高めるべく地道な一歩を踏み出した。
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